吃音と心理的苦痛について:研究からわかること|はかたみち耳鼻咽喉科|福岡県久留米市の耳鼻科・耳鼻咽喉科

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吃音と心理的苦痛について:研究からわかること

吃音は単に話し方に表れる「つっかえ」や「繰り返し」だけではありません。吃音の影響は、話すこと自体の不安や緊張、日常生活への影響など、心理的な面でも非常に大きなものがあります。このたびご紹介する研究では、吃音と心理的苦痛(PD: Psychological Distress)の関連について詳しく調べられています。
 

吃音者の心理的苦痛(PD)の有病率

この研究では、吃音を持つ方(PWS: People Who Stutter)の心理的苦痛(不安や抑うつなど)の有病率を調査しました。その結果、吃音を持つ方の心理的苦痛は一般的な集団と大きな差はありませんでした。ただし、一部の吃音者においては、不安や抑うつのような心理的な負担が特に高いことが確認されました(Manning & Beck, 2013)。

また、この研究では、吃音者が日常生活でどのように心理的な負担を感じるかについても調査されています。例えば、吃音を隠そうとする行動や、話すことへの恐怖が、心理的苦痛と密接に関係していることがわかりました。特に、スピーチ状況における不安や否定的な自己評価が心理的苦痛を悪化させる要因となることが示されています。
 

吃音と心理的要因の関係

研究では、吃音と心理的要因の関係性を測るために、以下の3つのポイントが注目されました。

  1. スピーチ状況特有の不安
    吃音者の多くは、特定の状況で話すことに対して不安を感じやすい傾向があります。この「状況特有の不安」は、心理的苦痛を大きくする要因の一つです(Stirling & Hellewell, 2013)。

  2. 回避行動
    吃音者が、話すことを避けたり、特定の言葉を使わないようにしたりする行動は、一時的には役立つかもしれませんが、長期的には逆に心理的な負担を増大させる可能性があります(Plexico et al., 2009)。

  3. 否定的なコミュニケーション態度
    否定的な態度や自己評価は、心理的苦痛の悪化と強く関連しています。このような態度を持つ方は、不安や抑うつのリスクが高まることが確認されています(Boyle, 2015)。

     

臨床での活用:吃音治療における心理的支援

この研究は、吃音の治療において心理的な支援が重要であることを示唆しています。以下のようなアプローチが効果的とされています。

  1. 認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)
    CBTは、不安や否定的な態度を改善するために非常に有効です。具体的には、否定的な考え方を修正し、ストレスを軽減する方法を学びます(Menzies et al., 2008)。

  2. 暴露療法
    話すことへの恐怖や不安を克服するために、徐々に恐怖の対象に慣れていく方法です。特に社交不安の軽減に効果があります(Scheurich et al., 2019)。

  3. 吃音修正法
    吃音そのものを克服するだけでなく、話すことに対する不安を減らし、前向きな自己評価を促す方法です(Van Riper, 1982)。

     

まとめ

吃音は話すことの難しさだけでなく、心理的な側面でも大きな影響を与えるものです。この研究は、吃音者の心理的苦痛の原因とその対処法を明らかにする重要な一歩となっています。吃音や話すことへの不安に悩む方は、ぜひご相談ください。

参考文献

R. Panzarino et al. "Relationships Between Psychological Distress and Affective, Behavioral, and Cognitive Experiences of Stuttering.." American journal of speech-language pathology(2023): 1-17 . https://doi.org/10.1044/2023_AJSLP-22-00347.