
皆様、こんにちは。はかたみち耳鼻咽喉科 院長の宮地英彰です。
「最近、会話で聞き返しが増えた」 「テレビの音量が大きくなったと言われる」
こうした“聞こえにくさ”を、「歳のせいだから仕方ない」と我慢して放置していませんか? 実は近年の医学研究により、「聞こえ(難聴)」と「脳の健康(認知症)」には非常に深い関係があることが世界的に明らかになってきています。
今回は、難聴が脳に与える影響と、国際的な最新臨床試験(ACHIEVE試験)で実証された補聴器の予防効果について分かりやすく解説いたします。
世界的に影響力のある医学誌『Lancet(ランセット)』の国際委員会報告において、難聴は「生活習慣や医療的介入によって予防・対策が可能な認知症の危険因子」の中で、最も影響度が大きいと指摘されています。
これは高血圧や糖尿病、運動不足などを抑えて第1位となっており、「聞こえのケア」が将来の脳の健康を守る上でいかに重要であるかを示しています。
- 軽度難聴: リスク約2倍
- 中等度難聴: リスク約3倍
- 重度難聴: リスク約5倍
音が聞こえにくくなると、脳は音を推測することに過剰なエネルギー(認知負荷)を消費してしまい、記憶や思考に回すスタミナが減ってしまいます。また、会話が減って社会的孤立につながることも脳に悪影響を及ぼします。
「では、補聴器をつければ本当に認知機能の低下を防げるのか?」という疑問に対し、極めて重要な答えを出したのが、2023〜2024年に国際医学誌『Lancet』等で発表された大型臨床試験**「ACHIEVE(アチーブ)試験」**です。
この研究では、補聴器による聴覚介入を受けたグループと、健康教育のみを受けたグループを3年間にわたって比較追跡しました。
その結果、**高血圧や糖尿病などの持病がある方、低い教育水準、低所得、あるいは独居(一人暮らし)など、認知機能低下の潜在的リスクが高い集団において、補聴器を使用することで3年間の認知機能低下が「約48%も抑えられた」**という画期的な成果が実証されました。
※元々リスクが低い健康な集団では3年間という短期間での明確な差は出にくいものの、研究者たちは**「聴覚への介入は、リスクを抱える方々に特に大きな利益(有益性)をもたらす」**と述べています。
4. 補聴器は単なる機械ではありません:「脳のリハビリ」です
補聴器は、単に音を大きくするだけの機械ではありません。お休みしていた脳の聴覚ネットワークに再び音を届け、脳を刺激し直す**「脳のリハビリ機器」**なのです。
言葉を聞き分ける脳の力が大きく低下してしまう前に、「できるだけ早い段階」でケアを始めることが補聴器にスムーズに慣れる最大のコツです。
当院では、医師・言語聴覚士・補聴器認定技能者が連携し、患者様お一人おひとりの耳に科学的に音を合わせる「宇都宮方式」の聴覚リハビリテーションを行っております。